作者
Hidekazu Takemura,Wataru Hida,Tsukasa Sasaki,Nobuhiko Miura,Tetsuzo Sen
摘要
本研究は, 職業別における慢性閉塞性肺疾患 (chronic obstructive pulmonary disease: COPD) の有病率と喫煙習慣について検討し, COPDの予防や喫煙対策に活用するための資料を得ることを目的とした。対象は, 仙台市にあるエスエスサーティ健康管理センターにおいて, 人間ドックを受診した男性8, 659人 (年齢: 47.7±8.2歳; 喫煙率: 49.9%) とした。データの解析は, COPDの有病率と喫煙率を算出して, 職業別および業務環境別に実施した。COPDの定義は1秒率 (1秒量÷肺活量×100) が70%以下の場合とした。全対象者における有病率と喫煙率は, 職業間において有意差が認められた (有病率: p<0.05, 喫煙率: p<0.01) 。また, 同一年齢群における職業別の喫煙率と有病率には, γ=0.83 (p<0.05) と相関関係が認められ, 喫煙率の高い職業は有病率も高値を示した。なお, 各職業の有病率は, 運輸・通信職が5.3%, 販売職が4.6%, 管理職が4.1%, 生産・労務職が3.3%, 専門・技術職が3.3%, その他の職業が3.3%, 事務職が3.2%であった。業務環境別の有病率と喫煙率については, 外勤職業群が内勤職業群に対して高値を示した。これらのことから, COPDの有病率と喫煙率は職業によって異なり, 高喫煙率の職業ほど有病率が高値を示すことが明らかとなった。また, 有病率と喫煙率は, 事務職などの内勤職業群に比べ, 運輸・通信職や販売職などの外勤職業群が高値を示すことが示唆された。したがって, COPDを早期にスクリーニングする目的のもと, すべての健康診断受診者に対してスパイロメトリーを実施するとともに, 外勤職業従事者を中心とした喫煙対策を講じることが重要と考えられた。