作者
Taro Nishimura,Tomoyuki Akai,Osamu Kakihana,Masashi Kamon
摘要
ジオテキスタイル圧密透水試験機を用いて, 土―ジオテキスタイル― 土の積層系の透水性に及ぼすジオテキスタイルの効果について検討した.測定された積層系の透水係数は, 土とジオテキスタイルの各層の透水係数の加法則は成立しないことが確かめられた.透水係数の異なったジオテキスタイルを用いた積層系の透水係数の変化は, 加法則を仮定した計算から得られた変化より大きくなった.これらのことはジオテキスタイルの存在によって変わる積層の土の構造が, ジオテキスタイルの構造に依存することを示している.しかし, ジオテキスタイルの構造によるフィルター層の構造の違いについて明らかにするには, 今後の詳細な実験およぼ検討が必要である.積層系の透水係数は, 全体的にはジオテキスタイルの密度の増加とともに減少する.しかし, 織物, サーマルボンド不織布, ニードルパンチ不織布の群を個別にみると, その関係は単調ではなく, ジオテキスタイルの他の構造要因が関与することを示唆した.ジオテキスタイルの平均細孔径が大きくなると積層系の透水係数は大きくなる傾向が不織布全体としては観測されたが, サーマルボンド不織布, ニードルパンチ不織布個々にはそれぞれ若干の傾向の違いが観測された.織物については, 平均細孔径が200~300μm程度までは平均細孔径の増加とともに積層系の透水係数は大きくなる.さらに大きい細孔径ではほぼ一定になった.この傾向は, 流出する土の量と平均細孔径との関係も同様であった.このことからも積層系の透水係数は土の層にできるフィルター層に依存することが明らかになった.BCF織物を用いた実験から, 比較的大きい糸間の空隙が少なく, 比較的小さい糸内の空隙の多いBCF織物のようなジオテキスタイルが濾過機能に優れ, 透水性の低下も小さいことが明らかになった.このような濾過機能についても, フィルター層が大きく寄与しているものと考えられ, 本実験中最も密度の大きい織物を除いては, ジオテキスタイル自身はほとんど濾過性に寄与していないものと考えている.結果の一部を表4にまとめた.なお, この研究はジオテキスタイル技術研究会との共同研の成果の一部をまとめたものである.