作者
Hidekazu Takemura,Wataru Hida,Tsukasa Sasaki,Nobuhiko Miura,Tetsuzo Sen
摘要
本研究は, 人間ドック受診者における慢性閉塞性肺疾患 (chronic obstructive pulmonary disease: COPD) の有病率と喫煙習慣について検討し, 有病者の実態を明らかにすることを目的とした。対象は, 仙台市にあるエスエスサーティ健康管理センターにおいて, 2001年1月~12月に人間ドックを受診した6, 967名 (男性4, 722名, 女性2, 245名; 平均年齢46.9±8.0歳; 年齢分布30~73歳; 喫煙率38.8%) とした。解析は, COPDの診断基準を1秒率 (1秒量/肺活量×100) ≦70%として, 年齢階級別および喫煙習慣別 (非喫煙者, 元喫煙者, 現喫煙者) に実施した。全対象者におけるCOPDの有病率は3.8%を示した。喫煙習慣別の有病率は, 非喫煙者, 元喫煙者, 現喫煙者のいずれも50歳代以降に増加した。特に現喫煙者の有病率の増加が著明であった。各年齢階級内における喫煙習慣別の有病率については, 30歳代, 40歳代において有意差が認められなかった。しかし, 50歳代および60歳以上の有病率は, 非喫煙者, 元喫煙者, ブリンクマン指数 (BI) <400の現喫煙者, BI≧400の現喫煙者の順に高くなる傾向が認められ, 特にBI≧400の現喫煙者の有病率は, 非喫煙者, 元喫煙者に比べ有意に高値であった。これらのことから, COPDの有病率は喫煙習慣にかかわりなく50歳代以降に増加することが明らかとなった。また, 50歳代以降の有病率は, 喫煙習慣を持ちBIが大きいほど高いことが示唆された。しかし一方で, 非喫煙者においても有病率の増加が認められ, さらにCOPD発症の最大危険因子と考えられる喫煙習慣の保有率が, 若年層ほど高値であった。したがって, COPDを確実かつ早期にスクリーニングするためには, 人間ドックを含めたすべての健診においてスパイロメトリーを実施する必要があると考えられた。