摘要
目的:血液透析患者におけるそう痒症の最近の実態を明らかにするとともに,オピオイドκ受容体作動薬ナルフラフィン塩酸塩の臨床効果を検討することを目的とした.方法:東海地区17施設の血液透析患者を対象に,かゆみの程度[5段階カテゴリー評価(白取のかゆみスコア)およびvisual analogue scale],頻度,および,かゆみによる睡眠障害の程度等について実態調査を行った.さらに,実態調査で回答が得られた患者を対象にナルフラフィン塩酸塩投与後の臨床効果の調査を行った.結果:実態調査は,1,936例(男性1,261例,女性675例,年齢平均65.1歳,透析歴平均6年11か月)に実施した.回答があった1,927例のうち1,289例(66.9%)にかゆみで悩んだ経験が認められ,かゆみの程度と頻度の関係は,かゆみが強いほど,頻度も高かった(p<0.01).かゆみによる睡眠障害は41.2%(461/1,120例)にみられ,その程度もかゆみの程度と相関していた(p<0.01).また,実態調査後ナルフラフィン塩酸塩が投与された52例(うち15.4%(8例)は5.0μg/日に増量)を対象にしたアンケート調査の結果,63.5%(33例)で白取のかゆみスコアが改善し,平均VAS値(平均値±標準偏差)も投与前後で70.9±22.2mmから39.5±29.8mmへと有意に低下した(p<0.01).また,42.3%(22例)の患者に睡眠障害の程度の改善が認められ,睡眠障害を伴う患者は23例から10例に減少,特に中等度以上の睡眠障害を有する患者は15例から2例に減少した.結論:現在でも,多くの透析患者にそう痒症が認められ,睡眠障害などQOLに影響を及ぼしていることが確認された.ナルフラフィン塩酸塩は,透析そう痒症および透析そう痒症に伴う睡眠障害に有用であった.