緒言:非急性腎障害(AKI)合併アシクロビル(ACV)脳症の報告が少ないため,AKI合併例と比較して,その臨床像を明らかにする.対象:2015年8月~2022年9月までに帯状疱疹に対してバラシクロビル(VACV)投与中に脳由来と考えられる神経症状を来して当院で加療を行った症例.方法:クレアチニン(Cre)は①入院時及び②入院第7病日以内にCreを適時測定した.入院第7病日以内に測定した中で最小のCre値を求めた.下記に各用語の定義を示す.ACV脳症:①VACV開始後に脳由来と考えられる神経症状が出現した,②VACV中止により神経症状が改善したという2つの項目を満たした場合.急性腎障害(AKI):来院時のCre値が最小のCre値と比較して1.5倍以上である場合.対象をAKI合併群と非AKI合併群に群別し,比較した.結果:ACV脳症の症例は18人(男性5人,平均年齢81.3±5.5歳).全例でVACV 3,000 mg/日が処方されていた.最小Cre値は1.93±1.76 mg/dL,AKI合併群は10人(56.6%),非AKI合併群は6人.全例でVACV投与が中止され,緊急透析治療を行ったのは10人(55.6%)(うち維持透析患者2人を含む)であった.全例が回復しており,死亡者はいなかった.AKI合併群と比べて非AKI合併群ではCa拮抗薬の内服歴(33.3% vs 80.0%,p=0.092)や緊急透析の実施割合(16.9% vs 70.0%,p=0.059)が低く,治療開始から症状が改善するまでの期間が長い(3.67±1.86日 vs 2.20±0.63日,p=0.073)傾向を認めた.結語:非AKI合併ACV脳症の特徴として,緊急透析の実施割合が低く,これが症状期間の延長と関連していると思われた.